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「何だか制服みたい・・・」

 9月中旬ごろから大阪や阪神間の私立小学校の入試が始まり、受験会場に向かう親子連れをよく見かける。私も娘を受験させた経験があるからよくわかるが、だいたいどこの小学校もまずは面接からスタートなので、母子揃って何となく緊張している様子が伝わってくる。
 私自身同じ経験をし、来年はまたそれを繰り返さなければならないので、他人事とは思えず、ついつい電車の車内などでそのような親子連れを観察してしまう。それにしても、いかにもそれとわかる外見は、電車の中では非常に目立つ。母親はほぼ紺色のスーツかアンサンブル姿で、ハンドバックや手提げ袋も黒か紺一色である。

 以前雑誌で読んだのだが、首都圏に次いで京阪神でも大手私立大学が附属の小学校を次々と開校させたことで「お受験」ブームが到来し、「お受験」がビジネス拡大の機会として注目されているらしい。受験準備のための幼児教室や塾が雨後の筍のように増えただけでなく、百貨店はこぞって夏前からお受験ファッションの特設会場を設けて、子供の服や靴、母親のスーツや小物類を売っている。
 私が4年前に娘を受験させたときは、仕事上のフォーマルな機会に着用するためにすでに持っていた紺のツーピースを着て、靴やバッグも手持ちのものを使った。しかし、専業主婦の知人たちは、わざわざ受験用に紺のスーツやワンピースを新調しており、それが一般的だった。当然子供には受験用の服装を揃える(娘には白のブラウス、紺のジャンパースカートとボレロ、黒のローファーを買った)ので、「お受験」はかなりの需要が見込めるマーケットだと思う。百貨店がそれを売上拡大の好機と見るのも当然だろう。

 職場の同僚が、「受験する子供の母親って、何でみんな同じようなファッションになるのかなぁ。何だか制服みたい・・・」と私に感想を漏らした。経験者としての私の答えは、「とにかく目立たないようにするため、他の母親と同じにするのが無難なのよ。周囲から浮いた服装で、母親が目立っても何も得しないから。」
 これって、何かと似ているとふと思った。そう、今の女子大生の就活ファッションと同じなのである。最近は誰もかれも黒の3つボタンのジャケットとタイトスカートという同じ服装で、会社説明会や入社試験会場に行っている。これこそ制服のようである。その服装の女子大生もたぶん「服装で目立っても・・・」と答えるだろう。
 私が就職活動をしたのはもう20年前になるが、その時は今ほど制服のようなリクルートスーツはなかった。もちろん紺の(黒ではない)ジャケット&タイトスカートは最も一般的であったが、もっと自分が着たい服装を選ぶ自由があった。私は紺のワンピース、ベージュや紺のツイードのスーツを着用して面接を受けたし、試験場でもパステルカラーやグレー、チェックなどの柄物、etc.とさまざまな服装が見られた。いつのまにか「とにかく目立たず、周囲と同じに・・・」と同じようなスタイルばかりになってしまったようだ。

 高度成長期には日本人サラリーマンはダークなシングルスーツに白のシャツ・・・という出で立ちで、「皆同じ」と海外から揶揄されていたと聞いたことがある。まさに働く男の制服のようなものだった。それが、今では業界にもよるが、服装の自由がきく範囲が広がっている。サラリーマンは「とにかく目立たず、周囲と同じに・・・」なんて言わないだろう。逆に業種によっては、自分の服装も能力の表現の一手段で、個性を発揮する機会とみなしているかもしれない。

 就職活動は自分の個性や能力を見せて、いかに自分が他の学生とは違うのだということをアピールする機会だと思うのだが、それでも服装は「とにかく目立たず、周囲と同じに・・・」になってしまうのには首をひねる。
 話をお受験ファッションに戻すが、母親が目立たないようにするのは、就職活動中の女子大生と根本的に違う理由による。受験をするのは母親ではなく、子供である。確かに面接では親も質問され、観察されるが、それ以外では母親が個性を見せる必要はないから、「とにかく目立たず、周囲と同じに・・・」に落ち着くのだろう。

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